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「掉尾の一振」を検証する

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掉尾の一振とは

日本の株式市場において「掉尾の一振」(とうびのいっしん)という相場格言があります。

年内最終取引日である大納会に向けて株価が上がりやすいとされるアノマリーを指します。

※アノマリーとは、理論的な説明ができない現象に対する相場の経験則です

参考: 掉尾の一振とは 年末株高の経験則、過去は勝率6割

アノマリーの理由として想定される要因

日本の税制は1月から12月の所得に対して、課税されます。

株式売買の税金、上場株式等の譲渡所得も受渡日が年内の取引を対象として、利益が出たら税金が約20%かかります。

そのため、実現利益が出た場合は、保有している評価損を実現させることで利益を減らし税金を減らすということが行われます。

これが、節税売りとよばれます。さらに、株式の譲渡損益は最大3年間通算可能であり、評価損を実現させることで翌年以降の節税対策にも活用できます。

そのため、年内の取引や相場状況を見て、12月に売り物が出やすく、出た利益から安値になったものを買いに回るため、年末にかけてあがるのではないかという仮説です。

ドレッシング買いとも呼ばれ、機関投資家が保有する株式の評価額を上げる目的で買い注文を入れることがあります。

特に、年間のパフォーマンスで評価されるファンドマネージャーは少しでも評価益を増やすことで、自身の成績を高めようとします。

そのため、追加で株式を買うことで、株価があがるのではないかという仮説です。

年が明けることで、機関投資家が新たな投資戦略やポートフォリオの見直しで新たな買いが入るのではないかという期待感から先回りして買われるという仮説です。

また、海外投資家は年末の前にクリスマス前後から休暇をとることが多く、それまでに縮小していたポジションを戻ってきた年明けから新規でポジションをとるのではとも言われています。

データによる検証

Investing.comで取得した12月の月足データの騰落率(始値と終値の変化率)を計算しました。

日経平均株価の12月の騰落率

データの取得できた1984年~2023年までの40年間分を結果をまとめました。

始値終値騰落率結果
202333537.4433464.17-0.1%負け
202228273.1326094.5-6.7%負け
202127866.7328791.713.5%勝ち
202026624.227444.173.8%勝ち
201923388.6323656.621.6%勝ち

データ: Investing.com 日経平均株価

TOPIXの12月の騰落率

データの取得できた2003年~2023年までの21年間分を結果をまとめました。

始値終値騰落率結果
20232385.232366.39-0.4%負け
20221996.721891.71-4.7%負け
20211930.881992.333.3%勝ち
20201765.551804.682.8%勝ち
20191705.991721.361.3%勝ち

データ: Investing.com TOPIX

上場株式の騰落レシオ

騰落レシオとは、値上がり銘柄数/値下がり銘柄数の計算結果であり、100%を基準にして、それを上回ると値上がり銘柄が多いことを示します。

一般に120%をマーケットに過熱感ありと判断され、70%まで落ち込むと底値ゾーンとも言われます。

日経平均株価やTOPIXはあくまでも指数であり、値がさ株や時価総額が大きい銘柄の影響が大きいですが、騰落レシオを見ることで、どの銘柄も満遍なく資金が入っている、つまり、投資家が儲かっている可能性が高いかを考えてみます。

東証に上場している銘柄の値上がり銘柄数、値下がり銘柄数と騰落レシオを2010年~2023年の13年間分の結果です。

※個人で収集している株価データなので、差異があります(上場廃止、データ取得漏れなど)

値上がり銘柄数値下がり銘柄数騰落レシオ日経平均株価の騰落率
20231,8272,36277%-0.07%
20221,0213,11033%-6.70%
20212,5881,504172%3.49%
20202,0491,860110%3.82%
20192,2271,562143%1.56%
20182143,4986%-10.45%
20172,2221,348165%0.18%
20162,2751,149198%4.40%
20159412,37840%-3.61%
20141,6871,481114%-0.05%
20131,9561,090179%4.02%
20122,400580414%10.05%
20111,4891,368109%0.25%
20102,347472497%2.94%

日経平均株価の勝敗と騰落レシオの100%の上下は一致しています。

考察メモ

まとめ

株価指数においては、掉尾の一振というアノマリーが存在することが判明したと言えます。

一方で、騰落レシオを見ると、すべての銘柄がそのアノマリーに当てはまるわけではないことがわかります。

特に、アノマリーが外れるときは、7割の銘柄が下落していることに対して、アノマリーが成り立つ際も半分~6割程度の銘柄のみ成立。

指数への影響が大きい銘柄を中心に買いが集まることで、機関投資家の『お化粧買い』がアノマリー形成の一因となっている可能性があります。

投資戦略としては、12月に安値のところで、指数系のETFや先物の売買が良いのかもしれません。

損を出している銘柄については、『掉尾の一振』に過度な期待を抱かず、冷静に損切りを検討することが重要です。(自戒の念を込めて)