はじめに
本レポートは、Google社のNootebook LMに第3四半期決算短信を取り込み作成したレポートです。
データソース
- 野村ホールディングス 2026年3月期 第3四半期決算短信(2026年1月30日発表)
- 大和証券グループ本社 2026年3月期 第3四半期決算短信(2026年2月2日発表)
- 岡三証券グループ 2026年3月期 第3四半期決算短信(2026年1月29日発表)
2026年3月期 第3四半期 大手証券3グループ 競合比較分析レポート:収益構造と市場耐性の評価
1. エグゼクティブ・サマリー:主要3社の決算概況と市場ポジション
本レポートでは、野村ホールディングス(以下、野村)、大和証券グループ本社(以下、大和)、岡三証券グループ(以下、岡三)の2026年3月期第3四半期累計(2025年4月1日〜12月31日)決算を比較分析し、各社の戦略的進捗と収益の質を検証する。
当期間の市場環境は、米政権による相互関税政策の発表に伴う4月の調整局面を経て、関税措置の90日間停止発表を機に回復へと転じた。10月以降は積極財政への期待から日経平均株価が史上最高値(一時52,000円超)を更新するなど、モメンタムは極めて強い。この追い風を受け、3社ともに増収を確保したが、利益面では「収益の質」の差が鮮明となっている。
主要経営指標の横断比較(2025年4月1日〜12月31日)
| 指標(単位:百万円) | 野村ホールディングス | 大和証券グループ本社 | 岡三証券グループ |
|---|---|---|---|
| 純営業収益 | 1,590,532 (+10.5%) | 522,527 (+10.8%) | 66,652 (+9.5%) |
| *経常利益 | 432,148 (+15.5%) | 167,468 (△3.6%) | 15,361 (+28.4%) |
| *四半期純利益 | 288,196 (+7.2%) | 125,426 (+0.8%) | 11,779 (+23.8%) |
- (1) 野村は米国会計基準による「税引前利益」。大和、岡三は日本基準による「経常利益」。括弧内は前年同期比増減率。
- (2) 親会社株主に帰属する四半期純利益。
市場環境への適応力と収益の質に関する評価
- 「攻め」の収益化とクオリティの差異: 3社ともに活況なマーケットを背景に「攻め」の姿勢で収益を伸ばしたが、その内実には注意が必要である。野村がホールセール部門の過去最高収益など本業のモメンタムで増益を達成したのに対し、大和は経常利益が3.6%減と足踏みしている。大和の純利益が0.8%の微増に留まった背景には、227億93百万円もの「固定資産売却益」という一過性の特別利益による下支えがあり、本業の収益力については野村に比して慎重な評価が求められる。
- 「守り」の構造変化: 岡三は金利上昇局面を捉え、金融収支を81.2%増加させるなど「守り」の収益源を強化。また、3社共通して伝統的な委託手数料依存からの脱却が進み、ストック型ビジネスへの転換が市場耐性を高めている。
総じて、外部環境の恩恵を享受しつつも、自律的な「構造的進化」を遂げた野村・岡三に対し、大和は資産売却による利益調整の側面が見える決算となった。次章では、この収益構造の安定性を支えるストック型ビジネスの詳細を解剖する。
2. 収益構造の解剖:ストック型ビジネスへの転換と手数料依存度
証券業界がフロー型からストック型ビジネスへの転換を急ぐ中、当四半期は「預かり資産の積み上げ」と「銀行機能とのシナジー」が各社の差別化要因となった。
受入手数料とトレーディング損益の対照
- ストック収入の進展と粘着性:
- 野村: ウェルス・マネジメント(WM)部門のストック収入が過去最高を更新。ストック資産純増額は5,000億円を超え、ストック収入費用カバー率は71%に到達した。
- 大和: 「証券×銀行」のハイブリッド戦略が奏功。大和ネクスト銀行の預金残高は4.9兆円(前期末比15.0%増)と急拡大し、WM部門における残高ベース収益は898億円に達した。この4.9兆円もの巨大かつ「粘着性の高い」資産ベースは、フロー収益の変動を吸収する強力な防波堤となっている。
- 岡三: 投資信託の信託報酬を中心とする「その他の受入手数料」が109億61百万円(前年同期比20.8%増)となり、純営業収益全体の約16.4%を占めるまでに成長。独立系として着実な安定収益基盤の構築が見て取れる。
- トレーディング損益のボラティリティ: 野村のホールセールが好調を維持する一方、岡三は債券等トレーディング損益が78.5%減と苦戦。金利上昇局面におけるポジション管理の難しさが浮き彫りとなった。
セグメント別収益貢献度の差異
- 野村(グローバル・プラットフォームの規模): インベストメント・マネジメント部門において、マッコーリー・グループの米国資産運用会社の買収(買収額約18億米ドル)を完了。これにより運用資産残高(AUM)は過去最高の134.7兆円に到達し、2030年ビジョンに向けた規模の経済を追求している。
- 大和(WMの利益貢献): WM部門の経常利益率は36.7%と高く、グループ経常利益の約47%を叩き出す最大の稼ぎ頭となっている。
- 岡三(独自のプラットフォーム戦略): IT・事務子会社を「岡三ビジネス&テクノロジー」へ統合し、B2B2Cモデルのインフラを強化。さらに山形證券の子会社化により東北地方への地盤拡大を図るなど、大手2社とは一線を画す地域密着・プラットフォーム路線を鮮明にしている。
収益の「質」においては、粘着性の高い預金基盤を持つ大和、圧倒的なAUM規模を誇る野村、そして独自のB2B2Cインフラを固める岡三と、各社それぞれの安定化戦略が深化している。
3. 収益性・効率性指標の比較:利益率とROEの達成状況
資本効率とオペレーショナル・エクセレンスの観点からは、野村の「営業レバレッジ」の効き方が際立つ結果となった。
利益率および効率性の評価
- 営業レバレッジとコスト管理:
- 野村の当四半期ROEは10.3%となり、7四半期連続で目標レンジ(8〜10%+)を達成した。特筆すべきは、金融費用以外の費用が8.7%増加した一方で、純営業収益がそれ以上の伸び(10.5%増)を示した点であり、ビジネスモデル変革に伴う「構造的な進化」がROEの底上げに寄与している。
- 岡三は、販売費・一般管理費の増加を6.3%(537億円)に抑えつつ、営業利益を25.4%増(129億円)と大幅に伸長させた。人件費増をこなしながらも収益成長がコストを上回る、健全な効率改善サイクルに入っている。
- 部門別の収益性: 野村のWM部門が税引前利益率40%超を記録し、大和のWM部門(36.7%)を効率面で上回った。野村の包括的な資産管理サービスへの移行が、高いマージン率として結実している。
ROEの戦略的帰結
野村のROE 10.3%の継続性は、資本市場における信認を高める重要な指標である。一方、大和は純利益ベースでは微増だが、前述の通り一過性利益を除いた実力ベースのROEは野村に劣後している可能性が高い。各社の「稼ぐ力の厚み」には、現時点で明確な差が生じている。
4. 財務健全性とリスク耐性:自己資本比率と資産構成の分析
金融機関としてのレバレッジ戦略と、相場急変時のバッファについても各社の性格が分かれた。
自己資本比率と資本構成(2025年12月31日時点)
| 指標 | 野村ホールディングス | 大和証券グループ本社 | 岡三証券グループ |
|---|---|---|---|
| 自己資本比率 | 5.9% | 4.4% | 17.6% |
| 総資産 | 61.9兆円 | 38.6兆円 | 1.25兆円 |
| 自己資本 | 3.65兆円 | 1.71兆円 | 0.22兆円 |
- 戦略的レバレッジの対照: 岡三の17.6%という比率は、中堅証券としての高い安全性を確保していると同時に、今後のM&Aや株主還元に向けた「余剰資本」の存在を示唆する。対照的に、野村(5.9%)と大和(4.4%)は低比率に見えるが、これは巨大な資産規模を活用した高レバレッジ経営による資本効率追求の結果である。
- リスク露出の規模感: 野村の総資産61.9兆円は大和の約1.6倍に達し、トレーディング資産・負債の変動が財務に与えるインパクトは極めて大きい。当四半期もトレーディング資産の増加等が総資産を5.1兆円押し上げており、高度なリスク管理能力が収益の安定性を左右する。
相場環境変化への耐性
岡三はトレーディング商品を1,609億円減少させ、現金・預金を469億円増加させるなど、市場環境に応じた機動的な資産構成の調整を行っている。巨大なリスクポジションを抱える大手2社に対し、岡三は「安全性」という独自の付加価値を財務面で維持している。
5. 結論:各社の市場における立ち位置と今後の展望
当第3四半期決算の分析から、3グループのポジショニングは以下のように集約される。
三社のポジショニング・マトリクス
- 野村ホールディングス(グローバル・スケール): マッコーリー事業の買収によるAUM 134.7兆円の確立、そして7四半期連続のROE目標達成。一時的な市況に頼らない「営業レバレッジ」の効いた収益体質へと進化した。
- 大和証券グループ本社(ハイブリッド・安定): 4.9兆円の預金基盤を核とした「証券×銀行」モデルは強力なモート(堀)となっている。ただし、当期の利益成長が一過性の資産売却益に支えられた側面は否めず、オーガニックな収益力の再加速が次期の課題となる。
- 岡三証券グループ(プラットフォーム・地域深耕): 「岡三ビジネス&テクノロジー」への統合と山形證券の子会社化。17.6%の強固な自己資本を背景に、B2B2Cプラットフォームと地域戦略を融合させた独自路線を確立。
今後の注目ポイント
マクロ環境では、米国の「90日間停止」後の関税政策の行方や、国内金利の2.0%台への上昇など、ボラティリティ要因は尽きない。しかし、野村が600億円(1億株上限)の自己株式取得および7,500万株の消却を決定したことは、市場の不透明感を上回る経営の自信と株主還元へのコミットメントを示している。
投資家は、野村の「構造的進化」によるROEの安定性、大和の「銀行シナジー」による預かり資産の粘着性、そして岡三の「プラットフォーム変革」に伴う成長余力に注目すべきである。各社ともに伝統的な「証券会社」の枠を超えた収益基盤の構築に成功しており、相場急変時における下値耐性は以前よりも確実に向上していると判断する。
以上[END OF DOCUMENT]
気になるポイント
- 野村がホールセール部門の過去最高収益など本業のモメンタムで増益を達成したのに対し、大和は経常利益が3.6%減と足踏みしている。大和の純利益が0.8%の微増に留まった背景には、227億93百万円もの「固定資産売却益」という一過性の特別利益による下支えがあり、本業の収益力については野村に比して慎重な評価が求められる。
- 3社共通して伝統的な委託手数料依存からの脱却
- ストック収入の進展
- 野村: ウェルス・マネジメント(WM)部門 税引前利益率40%超
- 大和: 「証券×銀行」のハイブリッド戦略 大和ネクスト銀行・ WM部門の経常利益率36.7%(グループ経常利益の約47%)
- 岡三: 投資信託の信託報酬
- 野村のROE 10.3%の継続性は、資本市場における信認を高める重要な指標
- 自己資本比率:岡三の17.6%という比率は、中堅証券としての高い安全性
- 野村、大和は高レバレッジ経営による資本効率追求
- 総資産:野村 61.9兆円 大和 38.6兆円 1.6倍
- 相場急変時における下値耐性は以前よりも確実に向上している