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配当・内部留保・自社株買い、最も得なのは?利益配分と株主リターンを徹底解説

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✅ この記事でわかること

利益は誰のもの?3つの使い道をモデル化して比較する

企業が営業活動等により、収益をあげて仕入れ、給与、税金などの支払いをすべて終えて、1年間に残った利益は当期純利益である。

この当期純利益は株主のものであり、主に3つの使い道がある。

配当、内部留保、自社株買いに分かれており、次のようにモデル化ができる。

利益=配当+内部留保+自社株買い

株主の視点で見るとき、つまり株主リターンは次のようにモデル化できる。

株主リターン = 配当利回り + ①BPS成長率(=内部留保) + ②株数減少によるEPS上昇(=自社株買いの効果)

ここで、①のBPS(1株あたり純資産)成長率については、次のように説明できる。

株価指標であるPBR=株価/BPSは、市場からの評価であり、もし、それが変わらないのであれば、BPSが増加した分株価も増加するはずである。

また、②について考えると、株数が減ることで、EPS(1株あたり純利益)が増える。PBRと同様に、PER=株価/EPSが変わらないのであれば、EPSの増加分、株価も増加するはずである。

以上より、利益配分のいずれも株主リターンの向上につながる。

具体的な利益配分の計算:1つのモデルで配当・内部留保・自社株買いを比べる

ここから、具体的な数値例を元に、施策による各数値変化を考える。

t期に、次の貸借対照表(B/S)の企業を考える。発行株数は100株とする。

借方貸方
総資産 200万円負債 100万円
純資産 100万円

また、仮定として、PBR=1.0倍を固定する。すると、次のように計算できる。

あわせて、自己資本比率=純資産/総資産を考えると

次にt+1期に、利益が10万円出たとする。

次の3パターンを考える。

  1. すべて配当にあてる
  1. すべて内部留保(純資産が増える)
  1. すべて自社株買い:利益10万円で1株1万円で10株買う

注意点

誰が得する?配当・内部留保・自社株買いのそれぞれのメリットと立場

結果だけ見ると、自社株買いが株主リターンが大きいと考えられる。

ステークホルダーを分解して考えると、メリット・デメリットがそれぞれ存在することがわかる。

手段経営者が嬉しい既存株主が嬉しい新規株主が嬉しい
配当△(手元資金が減る)○(現金がもらえる)◎(これから受け取る=魅力)
内部留保◎ 自己資本比率↑、財務安全性、再投資余地△(今すぐの利益にならない)△(企業価値は上がるが見えづらい)
自社株買い○(資本効率改善)◎(株数減でEPS/BPS↑)✕(後から買った株主は、既に買い戻しが進んでおり取り分が少なくなる可能性がある」)

自社株買いにおける株価影響の大きさ

簡単なモデルで自社株買いにおける効果の高さを実証した。

これが続く場合を考えてみる。つまり、毎年の利益10万円を自社株買いにあてるのである。

年度株数EPSBPS株価(PBR=1)
初期100100010,00010,000
1年目90111111,11111,111
2年目80125012,50012,500
3年目70142914,28614,286

注意点

次の視点:営業利益はどう配分されるべきか?投資・返済・財務戦略に向けて

純利益の大元は、営業利益である。

今回は、ステークホルダーを経営陣と株主と考えたが、銀行や顧客で考えることもできる。

例えば、営業利益を前倒し返済にあてることや、研究開発、事業投資といったことに当てることも可能である。

ここまで広げると、事業活動と株価の関係性をよりわかりやすく表現できると考えられる。

投資家が企業の本質的な収益構造と価値創造の源泉を見極めるために、利益の源である営業利益の配分にも注目すべきだろう。

まとめ

決算発表で、純利益をみて、一喜一憂することが多いが、それを株主リターンとして、考えることができた。

特に、自社株買いをし、消却することで、加速度的に株価があがる可能性があることを示せたのは、大きい。

EPSが横ばいでも、自社株買いによって1株あたりの価値が着実に増していくことを示した。

これは、株価がファンダメンタルに沿って動くならば、長期的には株価上昇につながる可能性が高いことを意味する。