BASE(4477)の直近の値動きと材料
2025/03/07(金)の場が閉まった16:30に4477BASEに大量保有報告書が提出されました。
提出者は、株式会社メルコホールディングスの社長牧寛之氏。保有目的は「支配権プレミアムの獲得を目標に、安定株主として保有いたします。目標に対して経営陣から賛同を得られない場合は、売却することがあります。」となっています。
この報告書を材料にした思惑で、相場は急騰しました。
提出の3週間前に、2024年12月期の決算発表があり、売上高36%増の営利で黒字転換を達成し、ギャップアップするもすぐに窓埋め。
400円台を維持できずにいましたが、牧氏の保有による思惑で、300円台から500円まで1週間で約70%の急騰となりました。
2025/3/11(火)には売買代金も200億円以上となる5,000万株もの出来高となり、出来高ランキングに登場するほと注目株になりました。
その間に保有割合を伸ばし、2025/03/12(水)時点で14.25%まで高めています。
メルコHDの牧寛之社長とは?
牧寛之氏は、株式会社メルコホールディングスの代表取締役社長です。
メルコ社はIT関連機器メーカー、特に無線LANルーターを扱うバッファローで有名ですが、食品メーカーのシマダヤなどを約22社を傘下に持つ持株会社です。
京都大学経済学部を2003年に卒業後、シンガポールを拠点に創業家の資産運用を行うヘッジファンドを立ち上げ、その運営に携わりました。
2011年にメルコHDの取締役、2014年には社長、2018年にはバッファローの社長に就任し、同年4月に父である創業者の牧誠氏が他界したのを機に、経営の実権を完全に握るようになりました。
経営者の顔を持つ一方で、ファンドマネージャーとしての顔をもっています。
実質的にオーナーであった投資ファンドのアルファレオHDは乾汽船の筆頭株主となったことで知名度をあげ、経営陣への株主提案や臨時株主総会の招集請求など、アクティビストとしての活動を行っていました。
その他にもいくつかの銘柄で株式投資を行っています。
参考:名門企業に社長解任を求めた“令和の村上ファンド”の「素顔」
牧氏の投資銘柄とその後の推移
- ベースフード株式会社(2936)
2024/10/16に8.36%の大量保有報告書が提出されてから、ちょうど1ヶ月後2024/11/15に経営上の拒否権を得る33.44%まで買い進める。
その間に株価は2024/10/15の終値210円から2023/10/29の高値629円まで約3倍の上昇となりました。
その後は400円台に落ち込むも、2025/2/17にメルコHDの資産管理会社MBFアクセラレーションがベースフードに対してTOB実施。
17日終値448円に対し、23.3%のプレミアムを付与した688円で買付。
ベースフードはTOBに賛同するも上場維持の方針となっています。
- アライドテレシスホールディングス株式会社(6835)
2025/2/18に大量保有報告書提出し、翌19日にストップ高。
その前々日2025/2/17からギャップアップしてストップ高、その翌日も上限をつけた上昇からの材料で一気に加熱するも続かず。
大量保有報告書も6.16%で1回のみのため、牧氏による買付はないようです。
その後、2025/03/07に提出された報告書で、保有目的を「安定株主として保有しております。」から「支配権プレミアムの獲得を目標に、安定株主として保有いたします。目標に対して経営陣から賛同を得られない場合は、売却することがあります。」に変更。
それをきっかけに急落。一時、297円の高値をつけましたが、200円を割る状況です。
参考:牧寛之の保有銘柄
- その他(2025/03/20追記)
牧氏の資産管理会社マキスを代表社員とするアルファレオHDによる投資案件もあります。
- 乾汽船(9308)
- クックパッド(2193)
乾汽船二関しては、敵対的買収の対抗措置に対して、裁判になりましたが、棄却。
クックパッドに関しては半年間で買い付けた後、4ヶ月後転売しています。
支配権プレミアムの狙いとは?(投資目的と影響)
BASE株式会社、ベースフード株式会社、アライドテレシスホールディングス株式会社に共通する投資目的である「支配権プレミアム」を調べました。
金融取引における「プレミアム」とは、追加的な価値のことであり、商品や証券を取得するために支払われる追加料金のことになります。
つまり、支配権プレミアムとは、企業を支配する経営権を取得する際に、通常の株式価値に上乗せして支払われる金額になります。
経営方針の決定や取締役の選任などの企業経営に直接関与する付加価値を持つと考えられるためです。
そのため、支配権として50%以上保有することで、通常の株式価値以上の投資リターンを期待していることを示します。
信用取引による買い占めのリスクと注意点(実例つき)
保有目的の他に、共通することとして、「提出社は、立花証券から信用取引にて発行会社株式を買い建てております」と記載されています。
つまり、信用買いで買い進めています。それに追随する投資家が増えることで、増担保になる可能性があります。
また、逆に売り崩しを狙い、空売りが増えると売り禁になる可能性があります。
1. 売り禁(売付停止措置)
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概要: 特定の銘柄に対して、新規の信用売り(空売り)を一時的に禁止する措置です。これにより、過度な売り圧力を抑制し、市場の安定性を保つことを目的としています。
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発動条件:
- 株価の急激な変動: 短期間での大幅な株価下落が続く場合。
- 空売りの増加: 特定銘柄への過度な空売りが集中し、流動性が低下する恐れがある場合。
- 取引量の急増: 異常な取引量の増加により、価格の不安定性が増す場合
2. 増担保規制(委託保証金率の引き上げ)
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概要: 信用取引において、投資家が差し入れる委託保証金の比率を引き上げる規制です。これにより、過度な信用取引を抑制し、市場の健全性を維持することを目的としています。
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発動条件:
- 残高基準:
- 信用買い株式数が上場株式数の30%以上。
- 3営業日連続して、各営業日の株価が25日移動平均株価に対して±30%以上の変動がある場合。
- 売買回転率基準:
- 1営業日の株価が25日移動平均株価に対して±20%以上変動し、かつ売買高が上場株式数以上で、信用取引の新規買付比率が60%以上の場合。
- 残高基準:
信用取引で出来高が増え、活発に売買されることで値動きが大きくなるため、取引は注意が必要です。
現在進行系のBASE(4477)の信用残高について
2025/03/07に発表された信用残は次の通り。
- 売残:1,419,000
- 買残:17,754,700
- 信用倍率:12.51
買い残超過ですが、この残高の内、16,582,700株は立花証券からの牧氏の残高と考えられます。
それを差し引くと、1,172,000株。信用倍率は0.82倍と売り超過。
しかも、日証協の貸付残高も8,581,225株あり、需給はかなり軽いと考えられます。
2025/03/19発表のBASE経営陣のIR(2025/03/20追記)
2025/03/19に3本のIRが発表された。
牧寛之氏からの公開買付け開始予定の連絡の受領、及びこれを受けた当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保を目的とする当社対応方針に関するお知らせ
「当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保を目的とする当社対応方針」に関する補足説明資料
主題は、牧氏の大量買い付け行為に対する「当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保を目的とする当社対応方針」になります。
その中でいわゆる敵対的買収の対抗措置としての「ポイズンピル」の導入となりました。
しかしこのIRの中で、「今後の当社株式の買付けについては公開買付けにより行うこととし、3月14日、公開買付代理人候補の証券会社から内諾を受けるとともに、週明けには関東財務局に対して当社株式に関する公開買付けの事前相談を開始する予定※目標として「支配権プレミアムの獲得(=少なくとも、発行済株式総数の30%超の持分割合の取得)」と記載されていました。
TOBが開始される可能性が高まっており、
ポイズンピルとは?
主な仕組み
企業は、既存の株主に対して新株予約権を事前に付与しておきます。敵対的買収者が一定の株式比率を取得した際に、買収者以外の株主がこの権利を行使し、市場価格よりも安い価格で新株を取得できるようにします。これにより、敵対的買収者の持ち株比率が希薄化し、買収コストが増加するため、買収を困難にする効果があります。
導入の目的
ポイズンピルの主な目的は、企業の自主性と独立性を保護することです。また、買収者に対して高い買収コストを課すことで、買収を断念させる効果も期待されます。
メリットとデメリット
メリット:
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強力な買収防衛策として機能し、企業の独立性を守ることができます。
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発動しなくても抑止力として効果を発揮します。
デメリット:
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株価の低下を招く可能性があります。
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新株発行の差し止め請求のリスクがあります。
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経営陣の保身と受け取られる場合があります。